東京胃会の成り立ち -上部消化管X線診断勉強会(東京胃会)-

「若手医師のX線診断離れが目立つ今,将来を見据え,放射線技師の人達も,先輩達が苦労して築き上げた,日本の優れた消化管のX線診断学と消化管X線撮影手技をもっと勉強し,後輩に正しく伝承してもらわないと困る.そのためには技師を対象とした勉強会を」これは,発起人の1人である元癌研内科馬場保昌先生(現早胃検常務理事兼早胃検研究所所長)の話である.

その後(故)白壁彦夫先生(早期胃癌検診協会;理事長)を訪ね,勉強会の主旨を説明し、東京胃会の名前を頂き、勉強会開催のお許しが出た次第である.

 (故)白壁彦夫先生と(故)熊倉賢二先生(慶應大学名誉教授)を顧問に,数名の指導医(加藤洋,柳澤昭夫,杉野吉則,馬場保昌,浜田勉),指導技師(安達純子,飯塚修),世話人(世話人代表;松本史樹)を選出し,1994年7月東京胃会の発足会を開くことができた.開催は奇数月に一回で,これまでに87回(1回の参加人数は100人前後である)を重ねている.また,その数年後には医師を対象とした消化管X線診断研究会も立ち上げられ,82回を重ね,多数の技師も参加している.2010年には厚生労働省医政局長通知で技師の読影補助が公布されており,私共は一層の努力が必要である.  

本会の特徴は,1)病理組織診断学と2)症例検討会で成り立っていることである.1)では組織診断学の基本が学べるよう,元癌研病理(現東京工科大学教授)加藤 洋部長,柳澤昭夫医長(現京都府立医科大学教授)による病理組織学の基礎講座が開かれている.2)の症例検討会は,指導医が必ず出席して司会と症例の読み方の指導を行っている.症例は一例とし,X線写真に限らず内視鏡写真についても丹念に読影する.最後に切除標本写真さらに組織所見の対比と病理医の解説を行う.将来は,医師の協力を得ながら技師のみで行えるように努力する積もりである.  本勉強会に出席することで得られた成果は何か.決して当てっこゲームでなく,診断価値の高いよい写真とは何かが分かるようになったことである.そして,診断に至るまでに必要な所見の拾い上げ方,読み方,そしてそのような写真を撮る為にどうすればよいかについての論理をじっくり考える習慣がついたことである.

 

顧問 松本 史樹(2011年秋)